1.万年筆とは
1.1筆記具としての特徴
1.2欠点
2ペンの歴史
2.1万年筆の開発史
2.2万年筆の文化史
3構造
3.1ペン先
3.2ペン芯
3.3本体(軸胴部)
3.4キャップ
3.5インクの補充方式
3.5.1吸入式
3.5.2カートリッジ式
4万年筆のインク
4.1インクの種類と組成
4.2インクの供給形態
5使用方法
5.1インクの充填
5.1.1カートリッジインク式万年筆の場合
5.1.2カートリッジ式万年筆にコンバーターを用いる場合
5.1.3ビン入りのインクを補充する場合
5.2筆記法
5.3メンテナンス
6トピックス
7メーカー
7.1日本
7.2英国
7.3ドイツ
7.4フランス
7.5アメリカ
7.6イタリア
7.7その他
万年筆とは
万年筆(まんねんひつ)は、ペン軸の内部に保持したインクが毛細管現象によりスリットの入ったペン芯を通じてペン先に持続的に供給されるような構造をもったペンの一種。インクの保持には、インクカートリッジを用いたもの、インク吸入器を利用したものなどがある。
万年筆は、他の筆記具と異なり、低筆圧で筆記可能であり、その名の通り半永久的とさえ言われるほどの長期にわたって使用することができる。また、使用者の癖に応じてペン先の形状などが変化して、オーナーにとっては書き心地が向上する(いわゆる、なじんでくる)という長所がある。しかしながら、以下のような多くの欠点がある。
頻繁なインク補充、ペン先の手入れ、吸入器の洗浄など、取り扱いが面倒。
温度や気圧の変動に弱く、しばしば不慮のインク洩れ・インク飛散事故を起こす。
インクの乾きが遅い。
高価である。
粗雑な取り扱いや衝撃に弱く公共使用に向かない。
ペン先に使用者の癖が付くため貸し借りや共用が出来ない。
にじみや引っかかりのため粗悪な用紙に弱い。
力強く書けないため、複写用紙に使えない。
ペン先の乾燥にも弱く、冬季の日本のような場所では、頻繁にキャップを締めておく必要がある。
なお、商品としては安価でメンテナンスを廃した「使い捨て」万年筆というものも存在する。
紀元前2400年頃/エジプト 葦ペンは葦の先端を割り、インキ持ちを良くし、書き易くする工夫がされていた。まさに万年筆のルーツと言える。インキの主成分はカーボン(煤)であり、墨と同じ物である。エジプト文明では良質の粘土がなく、ナイル河岸に豊富に生えていた水草パピルスの茎から作ったパピルス紙(紙の語源)に葦ペンと炭インキを使って象形文字を書いていた。
西暦79年/ポンペイ ヴェスビアス火山の噴火で埋まったポンペイの廃墟から青銅製のスタイラスペン(尖筆ペン)が発見された。これが現存する世界最古の金属製ペンである。
西暦85年/ローマ ローマ王朝時代は真鍮や銀製のスタイラスペン(尖筆ペン)が使われていたが、これが喧曄の道具として使われたために西暦85年に時の王が一般人の使用を禁止した。代りに登場したのが骨製や木製のスタイラスペン(尖筆ペン)である。
西暦700年頃 羽根ペンは7世紀初め頃から、18世紀までなんと1000年以上も使われていた筆記具である。
15世紀末「ハムレット」を書いたシェークスピアも、「失楽園」を書いたミルトンも羽根ペンを使い、羊皮紙に書いていた。鵞鳥の羽根で作られたものが大部分であった。
1300年頃 スタイラス ヨーロッパでは板などに鉛箔を貼り、その上にニカワやアラビアゴムを塗って乾かしたものに、真鍮・青銅などで作ったスタイラスペン(尖筆ペン)を使い文字を書いていた。
1780年 ペン先 イギリスの金具師サムエル・ハリスン(Samuel Harison)が鋼鉄板を筒状に丸めて、あわせ目が切割の働きをするペンを作った。
1750年頃 金属ペン 羽根ペンは先端がすぐ摩耗するので、その不便さを取り除こうと耐久性のある金属製のペン先の開発が進められた。
初期の金属製ペン先は羽根ペンのような弾力がなく紙が破れ易かったので、羽根ペンは金属製ペン先の発明の後も使われていた。
1761年 ファーバーカステル ドイツのニューンベルグ市郊外のシュタインで鉛筆の製造を始めたのが1761年である。この後、事業を拡大し万年筆の製造に着手したのが1935年(昭和10年)であった。
1795年 ペン先 イギリスの鍛冶屋のフェロース(FeIlows)がペン先を裏側で合わせて、表の切り割りを後から入れる方法を考案し品質が向上する。
1804年 ペンポイント 万年筆のペン先の先端はペンポイントと呼ばれ、銀色の小さな別の金属がついている。
これはイギリスの科学者テナント(Smithon Tennant)が発見したイリジウムとオスミウムの合金で、イリドスミンという摩耗に強い金属である。
1808年 ペン先 製紙機械発明で有名なドンキン(Bryan Donkin)が金属ペンとして初めて特許を得た。
1809年、イギリスのフレデリック・バーソロミュー・フォルシュが、ペン軸にインクを貯蔵するペンを発明し、特許を取得したのが最初。同年、イギリスのジョセフ・ブラマも同様の特許を取得しており、この頃から「fountain pen」(英語で泉のペンの意)と呼ばれるようになった。
1883年、アメリカの保険外交員ルイス・エドソン・ウォーターマンが毛細管現象を応用した万年筆を発明(現・フランスの万年筆会社ウォーターマン)。現在の万年筆の基礎となった。
万年筆が日本に入ってきたのは、1884年、横浜のバンダイン商会が輸入したのが始まり。東京日本橋の丸善などで販売された。当時は「針先泉筆」と呼ばれており、「萬年筆」と命名したのは、1884年に日本初の国産万年筆を模作した大野徳三郎と言われている。また、丸善の当時の販売担当の金沢万吉の名にちなんで名付けられたという説もある。
カートリッジ式の万年筆を発明したのは、阪田製作所(後のセーラー万年筆)の阪田久五郎と言われている。阪田は1954年にカートリッジ式万年筆の特許を取得しているが、同社が実際にカートリッジ式万年筆を初めて発売したのは1958年のことであり、1957年にカートリッジ式万年筆(オネスト60)を発売したプラチナ万年筆に遅れをとっている。
戦前には日本の万年筆製造は盛んで、1940年には世界生産量の半数を日本で生産していた。
万年筆はペンとともに1960年代頃まで、手紙やはがき、公文書など改ざん不能な文書を書くための筆記具の主流であったが、徐々にボールペンに取って代わられ、1970年代に公文書へのボールペンの使用が可能になり、また書き味に癖がなく安価な低筆圧筆記具である水性ボールペンが開発されたことにより、万年筆は事務用・実用筆記具としてはあまり利用されなくなっている。しかし最近、万年筆特有の書き味が見直され、趣味の高級文具として復権の兆しが見られる。また、万年筆のデザイン性、希少性に着目し、コレクターズアイテムとしても注目されている。このため、万年筆を扱った書籍や雑誌が刊行されるようになっている。
構造
カートリッジ式万年筆のパーツ。一番上の赤いものが全部を組み合わせた状態。以下、上から順にキャップ、本体、カートリッジ、コンバーターである。本体には窓があり、インクが入っているのかどうか確認できる。
カートリッジ式万年筆のパーツ。一番上の赤いものが全部を組み合わせた状態。以下、上から順にキャップ、本体、カートリッジ、コンバーターである。本体には窓があり、インクが入っているのかどうか確認できる。
万年筆はいくつかのパーツを組み合わせて作られている。
ペン先(ニブとも言う)には常時インクが接触していることから耐酸性が、強弱のある書き心地を実現するために適度な柔らかさが、長年使用することから耐磨性が必要となる。そこで、尖端にイリジウムをつけた金ペンが伝統的に使用されてきたが、1970年代からは合金を使用した白ペンも普及する。
価格が1万円前後の比較的安価な万年筆の場合は、ペン先にステンレスや鉄を使用した物が多い。一方、2万円を越える比較的高級な万年筆には、14金から21金の金が使用されている。また、デザインを考慮し、ロジウムで銀色にコーティングした金や、逆に金メッキしたステンレスが使用されることがある。
ペン先の形状は、その万年筆の書き味の決め手となる。一般的には、ペン先が細長く、薄く、ハート穴(ペン先のほぼ中央に空けられた円形またはハート型の穴)が大きいほどペン先は柔らかくなり、書き味は滑らかになる。逆に、幅が広く、短く、厚みがあり、ハート穴の小さいペン先ほど硬く、書き味も硬いものとなる。
多くのメーカーでは、ペン先の種類によって異なる線の太さを示すために、アルファベット1文字から2文字の略号が使われる。代表的な表記としては、 EF(極細)、F(細字)、M(中字)、B(太字)、BB(極太)など。ただし、同じ表記であっても統一的な基準があるわけではなくメーカー、製品ごとに実際の太さは異なっている。特に日本メーカーのものは欧米メーカーよりも半段階から一段階程度細いとされている。これは一説によると、日本メーカーがアルファベットに比べ込み入っている漢字を書く際の利便性を考えているからだといわれる。
ただし、線の太さはペン先の形状のみによって決まるものではなく、インクのフロー(出易さ)や紙とインクの相性などにも大きく左右される。おなじペン先であってもフローの良いインクを使えばフローの悪いインクを使った場合より当然太い線となるし、インクと紙の組み合わせによって紙にインクが染み込みやすい場合はそうでない場合に比べて線は太くなる。
特殊な形状としてカリグラフィ用や音符用、サイン専用のペン先なども存在する。
インクタンクからペン先へとインクを導くための部品をペン芯と呼ぶ。かつて、素材はインクになじみやすいエボナイトが使用された。現在ではエボナイト製のペン芯を使用しているメーカーは皆無に等しい。合成樹脂を使用するものが多く、また、その方が精度が高いものを容易に大量生産することが出来る。インクタンクから、ペン先のハート穴の部分まで細い溝が掘られており、毛細管現象によりインクが常に供給される。ペン芯には、前述の細い溝とはべつに、多数の溝が掘られ、過剰に供給されたインクを一時的にためておく構造となっている。
万年筆のうち、キャップや胴軸(筆記する際に手で持つ部分)は重量バランスひいては書き味を左右する部分であり、かつてはセルロイド、エボナイト等の軽量な素材が主に使用された。現在は、プラスチック製、金属製がほとんどであるが、高級万年筆には、耐久性を重視してエボナイトを用いるもの、昔ながらの風合いを重視しセルロイドを用いるもの、黒檀、カーボンファイバーなどの特殊素材を用いるものがある。
また、デザインも万年筆の評価、価値を決める重要な要素であり、高級万年筆には貴金属、宝石で本体を装飾したものもある。日本では、漆塗や蒔絵等の伝統工芸を生かした万年筆が戦前から製作され、特に戦前の並木製作所(現パイロットコーポレーション)の蒔絵万年筆は「NAMIKI(ナミキ)」のブランドで海外に輸出され、高い評価を得た。
本体にはインクタンク内のインク残量を見るための窓(インク窓)が設けられている場合が多い。単に素通しないしは透明プラスチックがはめ込んであるだけというものも多いが、高級なものではデザインの中に取り込む工夫がなされており、万年筆のデザインを特徴付ける要素の一つともなっている。また完全にスケルトンで中の機構が外から見ることの出来るものもある。但しカーボン系のインクの場合、表面張力が小さいのでインク窓表面全体にインクが広がり、且つインク自体が透光性が低いので、インクの量を確認出来ない場合がある。
万年筆のキャップはペン先を保護するとともに、インクが乾かないように密閉しておく役割ももつ。このため、機密構造となっているものが多いが、一部には穴のあいているものもある。螺子式あるいはスリップ式になっているものが主流であるが、低価格のものを中心に嵌合式(まっすぐパチっと言うところまで差し込むもの。フェルトペンなどでは主流。)のものも多い。嵌合式の場合、胸のポケットに入れて携行する場合外れてインクが服に染み出すこともある。
万年筆はインクを充填する方式により大きく2通りに分けられる。ひとつは、ビンに入ったインクを吸入する方式、もうひとつはカートリッジにつめられて小分けされた状態で流通しているインクをつかい、ペン軸内にカートリッジをセットして使用する方式である。カートリッジ式を採用したものでも多くはコンバーターと呼ばれるオプションを組み合わせることによってビン入りインクを利用することもできる。
ペン軸内にインクを吸入するための機構が内蔵されているものを吸入式という。ビン入りインクを吸入して用いる方法専用のもので、後述するカートリッジ式のものよりも多くのインクを一度に充填することができる。万年筆が考案された当初から使われている形式で、現在でも高価格帯の製品を中心に多くのモデルが製造されている。吸入装置は本体内を負圧にし大気圧でインクを本体内に送り込むもので、ピストン式のもの、スポイト状のもの等様々な方式がある。
現在は、インクの補充を簡単に行うため、インクを詰めたカートリッジが広く使われている。カートリッジの形状は原則としてメーカーごとに異なっており、ペンの製造メーカーから供給されるカートリッジを購入し使用するのが一般的である。ヨーロッパのメーカーの多くでは欧州共通規格のカートリッジが採用されており、この場合、欧州共通規格を採用するほかのメーカーのインクを使用することも可能である。ただし、欧州のメーカーであっても独自規格のカートリッジを採用するメーカーも多く、またペンの種類によって利用可能なカートリッジが異なっている場合もあるので、カートリッジ購入のさいには注意が必要である。カートリッジ式の場合、インクにかかる費用が吸入式の5倍近くになると言われている。
また、カートリッジ式を採用した万年筆でも瓶入りインクを利用できるように、コンバーターと呼ばれるピストン式のインク吸入装置がメーカーにより供給されている場合が多い。 ただし、カートリッジ式の万年筆はカートリッジ式で使用する方が良い場合が多い。
一般に万年筆用のインクとしては染料系のインクが用いられており、耐光性・耐水性に乏しい場合が多い。旧来それらの性質を求めるには化学変化によって紙に定着するタイプのブルーブラックが使用されてきた。
顔料系のインクは鮮やかな色彩を醸し出し、耐水性、耐光性はあるが、インクが乾くと目詰まりを起こし万年筆が使えなくなるので敬遠されてきた。製図や漫画の製作その他によく使われるインディアインク(インディアンインク)も詰まりやすいことから使えない。カーボン系の黒も同じ理由で敬遠されてきたが、現在では微粒子の万年筆用のカーボン・インクが販売されている。
インクは、大きく分けてビン入りとカートリッジ入りの二種類の形態で流通している。
ビン入りのインクは、一般的にはカートリッジ式のものより単価が安く、カラーバリエーションが豊富である。化学変化により紙に定着するタイプのブルーブラックや顔料インクなどの特殊インクについても瓶詰めで供給されている場合が多い。このため、万年筆を多用する人や万年筆に趣味性を求める人などに愛用されている。
これに対してカートリッジインクの長所はインクの充填作業が簡単になることと、小分けされたプラスチックカートリッジの状態であることから、持ち運びが楽なことである。ただし、典型的な色しか用意されていないことが多いし、ボトルインクでは化学変化により紙に定着するタイプのブルーブラックインクを供給しているメーカーであっても、カートリッジインクの場合は一般にブルーブラックは通常の染料インクであり耐水性・耐光性は期待できない。
万年筆は軸の中にインクをためて、そのインクを毛細管現象によりペン先に導くことによって筆記可能な状態を保つ構造をもつ。したがって、使用する前にペン軸の内部にインクを入れる必要がある。
インクカートリッジの形状は各社さまざまであるが、カートリッジインクの場合はカートリッジを装着するだけで使用可能となる。具体的には、首軸部分にカートリッジを正しい方向でおくまでまっすぐ(回転させるようにしてはいけない)差し込めばよい。この際、カートリッジの側面を強くつまんでいるとインクが飛び出すことがある。シェーファーだけは少し変った方法を推奨しており、カートリッジを、軸(首軸ではないほう)の中に入れそのまま首軸にねじ込む方式である。
同じメーカーの同じカートリッジを採用したペンであっても、コンバーターを利用できるものとできないものがあったり、固定方式などの点においてバリエーションが存在する場合があるので、原則として取扱説明書に記載されたメーカー推奨の組み合わせで使用する方が良いであろう。欧州共通規格を採用したものであっても、他社のコンバーターを使用するとインク漏れなどの原因となることがあるので注意が必要である。
吸入式の万年筆やカートリッジ式の万年筆でコンバーターを使う場合には、ビン入りのインクを使用することになる。
細かい手順は万年筆やコンバーターの種類によって異なるので製品に付属する説明書に従って操作しなければならないが、大まかな手順は共通している。まず、インクタンクの内部から空気を追い出すように操作する。その状態のままインクビンのインクの中にペン先を入れて、吸入動作をする。このとき、ペン先をつける量はペンによって異なるがハート穴やペン芯の空気穴が完全に隠れるようでないと空気を吸ってしまうことになり、インクを充填できない。充填が終わったら、余分なインクをふき取り、使用する。
インクボトルに残っているインクの量が減ってくると、インクを吸入するのが困難になる。このような場合は、小型の容器に移し替えたり、新しいインクを継ぎ足したりして使う。ただし、古いインクは変質していたりゴミが混入していたりする場合も多いので、インクの継ぎ足しはあまり推奨できる行為とはいえない場合が多い。一部のメーカーのインクでは瓶内に小区画を設定して、そこにインクを流し込むことで、インクの量が少なくなってもペン先を十分に浸すことが出来るようにするなどの工夫を行っている場合もある。
一般的には、軸を親指と人差し指の2本の指ではさむようにしてもつのが良いとされる。どこを持つかは、その人の手の大きさ、万年筆の大きさ、重量バランスなどにも拠るので一概には言えない。ヨーロッパでは万年筆の持ち方が初等教育段階で指導されており、学童用の万年筆には正しいもち方ができるように面取りしてあるものもある。
ペン先を紙に当てる角度は、ペン先の研ぎ方にも拠るが、かなり寝せて書くのが一般的でのようである。ボールペンのように垂直に近い角度で使うのは推奨されない。
ねじれ方向の角度に関しては、通常のペン先の場合、ペン先が紙に対して平ら、筆記方向に水平にあたるようにしなければならない。もし、ペン先がねじれて紙と接するように使ったとすると、引っかかるばかりでなく、割り切りの内側の角が削られて、かすれの原因ともなる。但し、楽譜用など特殊用途のペン先には、ペン先を紙面・筆記方向に垂直に当て、縦線を細く横線を太く引く設計のものがある。
かなり弱い筆圧でも筆記に支障はない。むしろ強い筆圧でやわらかい(よくしなる)ペン先のものを使うと割り切りが開いてしまいうまく書けない。そのため一般に筆圧が強い人には硬いペン先のものの使用が推奨されている。いづれにしてもペン先が反り返ってしまうほど高い筆圧を掛けての使用は故障の原因となる。
インクの出が悪い等、万年筆の故障のほとんどは、長期間使用しないことにより内部でインクが固着することによって引き起こされる。このため、万年筆にとっては、日常的に使用され、ペン先にインクが供給され続けることが一番のメンテナンスである。吸引式の場合インクの補充の際、インクが本体の埃や、固まりかけたインクの塊を押し流す役割を果たす。カートリッジ式の場合、この機能を期待できない。逆に、長期間使用しないときは、内部のインクを抜き、洗浄し乾燥して保管する必要がある。
洗浄には水またはぬるま湯を使用し、洗剤はペン先及び本体を傷める恐れがあるので使用しない。カートリッジ式の場合は、まずカートリッジを外し、ペン先を水またはぬるま湯に浸してそのまま数日放置し、内部のインクが流れ出るのを待つ。カートリッジ自体は注射器やスポイトで洗浄する。一方、吸入装置を内蔵する万年筆またはコンバーター式万年筆の場合は、余分なインクを瓶に戻し、水またはぬるま湯を入れたコップにペン先を浸け、水またはぬるま湯を吸入し、暫く待った後にインクの溶け出た水を捨て、この作業をペン先から出る水が無色になるまで続ける。この場合、洗剤等は使用しない。洗浄液は熱湯を使うとインクの粒子が変質し、かつ万年筆本体を傷めるので必ず微温湯を使うこと。
また、本体の外側部分は、樹脂などの弱い素材で作られることが多いため、傷をつけぬよう柔らかい布で磨くのがよい。
インクが詰まってしまい、どのような方法を用いてもそれを取り出すことできない場合、眼鏡を洗うための低周波、超音波洗浄器を用いて洗浄すると中の詰まったインクが出てくるので、それを用いるといい。この方法は、1度入れたインクを別の色に変えたいときなどに用いると、中の洗浄も短時間でできるので便利である。ただし、超音波洗浄機はその種類により周波数や音波強度に差が大きく、最悪ペン先のメッキを剥がすなど、ペンの使用にかかわる悪影響を及ぼす場合があるので注意されたい。
第二次世界大戦中米軍はフィリピンの抗日ゲリラに対し、パーカー社の万年筆を勲章の代わりに授与した。
パイロットコーポレーション – 国産最大手。スタンダードな製品から軸に蒔絵を施した最高級品まで幅広く取り揃える。カスタムシリーズやノック式のキャップレスが代表的製品。
ナミキ – パイロット社のブランド。元々は海外における同社の商標だったが、現在では国内でも最高級蒔絵万年筆に限り使用されている。
セーラー万年筆 – 同社の職人である長原宣義による特殊なペン先は評価が高い。プロフィットシリーズが代表的製品。
プラチナ萬年筆 – 万年筆通であった梅田晴夫と研究グループが開発したプラチナ#3776はロングセラー商品となっている。
カトウセイサクショカンパニー – 現代でもセルロイド製のペンを手作りで作っている。
ロングプロダクツ – 現代でもセルロイド・アセチロイド製のペンを手作りで作っている。
中屋万年筆 – 元プラチナ萬年筆の職人が創業。注文者の好みに応じて、ペン先やデザインを調整している。
大橋堂
川窪万年筆店
万年筆博士
エイチワークス – 万年筆専門店フルハルターと共同で万年筆を製造。現在は生産中止。
コンウェイ・スチュアート
ダンヒル
パーカー – 創業はアメリカ。一時代を築いた大人気製品を多く抱え、コレクターも多い。デュオフォールドは首脳会談の調印式で頻繁に登場している。
バーバリー
デ・ラ・ルー – ブランド名はオノト。同社は既に万年筆の製造はしていないが、コレクターに人気が高くビンテージ品として高値で取引されている。夏目漱石は同社の製品を愛用していたという。現在では丸善がオノトのブランドを借り受け復刻版を限定生産している。
ステッドラー
ファーバーカステル
ペリカン – インクの吸引式機構などの古典的な設計にこだわった製品が多い。同社の代表的製品であるスーベレーンM800は、ペン先の出来や重量のバランスにおいて最高傑作であると考える万年筆通は少なくない。
モンブラン – 現在ではブランド名のみが残っている。作家から一般人まで幅広い人気を誇る。とりわけマイスターシュテュックは著名であり、模倣したと思われる製品も少なくない。現在は流通管理の徹底による定価での販売や製品を一部高級品に絞り込む戦略を採っている。
ラミー – 近代的なデザインの筆記具を数多く製造。
ロットリング
ウォーターマン – 現在の形の万年筆を発明したウォーターマンが設立。独特のデザインを持つ製品が多い。
デュポン
クロス
シェーファー
モンテグラッパ
クローネ
アウロラ
オマス
スティピュラ
デルタ
ビスコンティー – 過去の高級筆記具の製法を現代に蘇らせた。
カランダッシュ(スイス) – 万年筆よりもボールペンが有名。
英雄(中国) – ブランド名はHERO。中国最大手の文具メーカー。